指輪の内側やネックレスの留め具に、目を凝らさないと見えないほど小さな文字が打たれているのを見つけたことはないでしょうか。K18、Pt900、750、SV925。数字とアルファベットの組み合わせでしかないその表示は、じつはその品物が何でできているかを示す、もっとも基本的な情報です。
買取の査定において、価格を組み立てる出発点になるのがこの刻印です。金かプラチナか銀か、そして純度はどれくらいか。この二つが決まらなければ、重さを量っても価格は出せません。逆に言えば、刻印を自分で読めるようになれば、査定に出す前に手元の品物のおおよその位置づけが分かるようになります。引き出しに眠っているアクセサリーの山を、売る価値のあるものとそうでないものに仕分けることもできます。
この記事では、編集部が刻印の見方を基礎から整理します。刻印が打たれている場所と探し方、金の刻印に使われる二つの表記方法、プラチナや銀の刻印、そしてもっとも注意したいメッキを示す刻印の見分け方まで、順を追って解説します。刻印が見当たらない場合や読み取れない場合の対応にも触れますので、手元の品物を実際に手に取りながら読み進めてみてください。
刻印は素材と純度を示す小さな手がかり
ジュエリーに使われる貴金属は、純度100パーセントのままではやわらかすぎて、日常的な着用に耐えません。そこで銀や銅、パラジウムといった他の金属を混ぜて硬さを出します。この混ぜ物のことを割金と呼び、割金をどれだけ加えたかによって純度が決まります。刻印は、その純度と素材の種類を短い記号で表したものです。
買取価格のうち、素材そのものの価値にあたる部分は、おおまかに言えば純度と重さ、そしてその日の相場を掛け合わせて計算されます。ここで純度を担うのが刻印というわけです。相場と純度の関係についてはジュエリーの買取相場はどう決まるかでも詳しく整理しています。
刻印が打たれている場所
刻印の位置はアイテムによっておおよそ決まっています。見当をつけて探すと、見つかる確率がぐっと上がります。
- 指輪は内側の面のどこか。石座の真裏や、リングサイズの数字の隣に並んでいることが多いです
- ネックレスとブレスレットは留め具の付近。引き輪の内側や、留め具に付いた小さな板状のプレートに打たれています
- ペンダントトップは裏面か、チェーンを通す輪の部分
- ピアスは耳に通す棒の部分、あるいは裏で留めるキャッチの側面
- イヤリングはネジやクリップの金具部分
- バングルは内周の内側、開閉部の近く
読み取るためのちょっとした工夫
刻印は非常に小さく、肉眼では判別しにくいことがほとんどです。まずやわらかい布で表面の皮脂や汚れを軽く拭き取り、明るい光の下で見てください。拡大鏡やルーペがあれば理想的ですが、手元になければスマートフォンのカメラで接写して画面上で拡大する方法でも十分に読めます。
注意したいのは、汚れを落とそうとして研磨剤や硬いブラシを使わないことです。長年の着用で刻印は浅くなっていることが多く、強く磨くと消えてしまう場合があります。査定前の手入れは、乾いたやわらかい布で軽く拭う程度にとどめておきましょう。
主な刻印の一覧
実際に目にすることの多い刻印を、素材ごとにまとめました。手元の品物と見比べてみてください。
| 刻印 | 素材 | 純度の目安 | よく使われるアイテム |
|---|---|---|---|
| K24 / 999 / 9999 | 純金 | およそ99.9パーセント | インゴット、コイン、記念品 |
| K22 / 916 | 金 | およそ91.6パーセント | 海外製のリング、コイン |
| K18 / 750 | 金 | 75パーセント | リング、ネックレス全般 |
| K14 / 585 | 金 | およそ58.5パーセント | 海外製のジュエリー、ピアス |
| K10 / 417 | 金 | およそ41.7パーセント | カジュアルなアクセサリー |
| K9 / 375 | 金 | 37.5パーセント | 英国系のアンティーク |
| Pt1000 / Pt999 | 純プラチナ | およそ99.9パーセント | インゴット、記念品 |
| Pt950 | プラチナ | 95パーセント | 結婚指輪、婚約指輪 |
| Pt900 | プラチナ | 90パーセント | リング、ペンダント |
| Pt850 | プラチナ | 85パーセント | ネックレスチェーン |
| SV925 / SILVER925 | 銀 | 92.5パーセント | シルバーアクセサリー全般 |
| Pd950 | パラジウム | 95パーセント | リング、チェーン |
表を見て気づかれたかもしれませんが、同じ素材に二通りの表記があります。K18と750のように、まったく違う数字が同じ純度を指しているのです。これは表記の方式が違うためで、次の項目で詳しく説明します。
金の刻印の読み方
Kのあとの数字は24分の何かを表す
KはカラットあるいはKaratの頭文字で、金の純度を24分率で示す単位です。純金を24として、そのうち何割が金であるかを分子で表します。したがってK18は24分の18、つまり75パーセントが金でできているという意味になります。K24なら24分の24で、混ぜ物のない純金です。
ここで紛らわしいのが、宝石の重さを表すカラットも同じ言葉である点です。ダイヤモンドの1カラットは0.2グラムという重さの単位であり、金の純度とはまったく別のものです。英語のつづりもcaratとkaratで区別されます。刻印にKが付いていれば純度、石の説明にctと書かれていれば重さ、と覚えておくと混乱しません。
なお、Kの位置は国によって慣習が異なります。日本ではK18のように数字の前に置くことが多く、海外では18Kのように後ろに置く例が目立ちます。どちらも意味は同じです。
日本のジュエリーでK18がもっとも多く使われているのは、実用上のバランスが良いためです。純金に近づくほど価値は高くなりますが、そのぶんやわらかく変形しやすくなります。25パーセントの割金を加えたK18は、日常的な着用に耐える硬さを保ちながら、金としての価値も十分に確保できる水準とされています。一方、K10やK14は割金が多いぶん丈夫で価格も抑えられるため、カジュアルなアクセサリーや海外製の量産品に多く見られます。
750や585といった数字は千分率
もうひとつの表記方法が、千分率です。1000のうち何が金かを直接数字で示します。750であれば1000分の750、すなわち75パーセントとなり、K18と同じ純度を意味します。ヨーロッパ製のジュエリーではこの表記が主流で、Kの文字は付かず数字だけが打たれていることも多くあります。
対応関係を覚えておくと便利です。999は純金、750はK18、585はK14、417はK10、375はK9に相当します。指輪の内側に750とだけ打たれていて何のことか分からなかった、という場合は、K18のジュエリーだと考えてよいでしょう。金の純度と査定額の関係はK18・K24など金の買取相場で計算の仕組みまで解説しています。
YG、WG、PGは色の違いを表す
K18のあとに、YG、WG、PGといったアルファベットが続いていることがあります。これはそれぞれイエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールドの略で、金の色を示しています。ローズゴールドを意味するRGが使われることもあります。
重要なのは、色が違っても金の含有率は同じだという点です。K18YGもK18WGもK18PGも、金が75パーセントであることに変わりはありません。違うのは残り25パーセントに何を混ぜたかで、銀と銅の比率を変えたり、パラジウムを加えたりすることで色が変わります。したがって、素材としての評価は色によって大きく変わるものではありません。
ただしホワイトゴールドは、表面にロジウムという金属をめっきして白さを出しているのが一般的です。長く使ううちにこのめっきが薄れ、下地の黄色みが見えてくることがあります。これは劣化ではなく仕様によるもので、地金としての価値が下がるわけではありません。
プラチナ・銀・パラジウムの刻印
プラチナはPtに続く数字が純度
プラチナの刻印はPtで始まり、続く三桁または四桁の数字が千分率の純度を示します。Pt900なら90パーセント、Pt950なら95パーセントがプラチナです。金のような24分率は使われないため、読み方はシンプルです。
日本では、リングにPt900、結婚指輪や婚約指輪にPt950、ネックレスのチェーンにPt850が使われる傾向があります。チェーンに純度の低いものが使われるのは、細く長い形状に必要な強度を確保するためです。Ptの文字だけ、あるいはPLATINUMと綴りで打たれている場合もあり、この場合は純度を測定して判断することになります。両者の違いはプラチナの買取相場で具体的に扱っています。
銀は925が基準
銀の刻印でもっとも多く見かけるのが925という数字です。SV925、SILVER925、あるいは925とだけ打たれています。これは銀が92.5パーセント含まれていることを示し、スターリングシルバーと呼ばれる規格に当たります。銀器やアクセサリーの世界で長く標準として使われてきた純度です。
ほかにSV1000やSV950といった表記もありますが、装身具では925が圧倒的に一般的です。ただし銀は金やプラチナに比べて相場が大きく低いため、小ぶりなアクセサリーだと素材としての価値は限られます。買取の可否についてはシルバーアクセサリーの買取相場を参考にしてください。
パラジウムとその他の表記
Pdで始まる刻印はパラジウムを示します。Pd950やPd500といった表記があり、こちらもPtと同じく千分率です。パラジウムはプラチナに似た白色の金属で、単体でジュエリーに使われるほか、ホワイトゴールドの割金としても用いられます。取り扱いのある買取店とない買取店があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
メッキや金張りを示す刻印には注意
刻印の中でもっとも誤解を招きやすいのが、素材の表記のあとにアルファベットが続くタイプです。数字だけを見て金製だと思い込んでしまうと、査定の場で期待とのずれが生じます。
- GPはゴールドプレーテッドの略で、金メッキを意味します。土台は真鍮などの卑金属です
- GEPは電気メッキを施したもので、これも表面だけが金です
- GFはゴールドフィルドの略で、金張りと訳されます。メッキより金の層は厚いものの、地金として扱われることは少ないのが実情です
- HGEは厚めの電気メッキを指す表記です
- GBやRGPといった表記も、金を貼り付けた加工品を示します
つまりK18と打たれていれば全体が金の合金ですが、K18GPと打たれていれば表面だけがK18相当の金という意味になります。この一文字か二文字の違いで評価はまったく別物になりますので、刻印を読むときは数字のあとまで必ず目を通してください。
とはいえ、メッキ製品に価値がまったくないわけではありません。デザイン性やブランド性が評価されて値がつくケースもあります。素材としての価値はほぼないという前提で、それ以外の魅力があるかどうかで判断するとよいでしょう。
刻印以外に打たれている数字や記号
指輪の内側には、純度以外の情報も一緒に打たれていることがあります。それぞれ意味が違うので、区別できるようにしておくと読み違いを防げます。
- 単独の二桁の数字はリングサイズを示している場合が多く、純度とは関係ありません
- 小数点付きの数字は石の重量で、ダイヤモンドであればDに続けて書かれることもあります
- アルファベットの組み合わせや図案は、ブランドやメーカーを示す記号です
- ひし形や小さな図形の中に数字が入っているものは、公的機関が品位を証明する目的で打つホールマークである場合があります
- 海外製では、製造年や生産地を示す記号が併記されていることもあります
石の重量を示す数字は、査定時に石の評価を組み立てる手がかりになります。ただし刻印の数字はあくまで製造時の表示であり、実測値と完全に一致するとは限りません。査定では実物を測って確認するのが通例です。
刻印がない、読めないときはどうするか
刻印が見当たらないからといって、その品物に価値がないと決めつける必要はありません。刻印がない理由はいくつも考えられます。
まず、サイズ直しを行った指輪では、切り詰めた部分に刻印があって失われてしまうことがあります。次に、古い時代のジュエリーやアンティークでは、刻印を打つ慣習そのものが今ほど徹底されていませんでした。また、国によって刻印の制度が異なるため、海外で作られたものには日本で見慣れない記号しか打たれていない、あるいは何も打たれていない場合があります。長年の着用で摩耗して読めなくなっている例も少なくありません。
こうした場合でも、買取店では成分を調べる方法があります。品物を傷つけずに含有金属を測定する分析装置や、比重を利用した測定法が用いられ、刻印がなくても素材と純度を判断できます。刻印が読めないまま自分で結論を出さず、まずは査定に出してみるのが現実的です。
反対に、刻印があるからといってそれが正しいとは限らない、という点も知っておくとよいでしょう。表示と実際の純度が異なる品物が流通することがあるため、買取の現場では刻印を参考にしつつ、必ず測定によって裏づけを取ります。刻印はあくまで最初の手がかりであり、最終的な判断は実測にもとづくものだと理解しておけば、査定結果の説明も納得しやすくなります。
自分で刻印を確認しておくとよい理由
査定を依頼すれば専門家が調べてくれるのだから、自分で読む必要はないのではないか。そう思われるかもしれません。それでも事前に確認しておくと、次のような利点があります。
- メッキ製品を先に取り除いておけるため、査定に出す点数を絞り込める
- 金とプラチナと銀を分けて持ち込めるので、当日の説明がスムーズになる
- おおよその素材と重さが分かれば、提示額が妥当な範囲かを自分で見当づけられる
- 宅配買取に出す場合、事前に一覧を作っておくと品物の取り違えを防げる
- 売らずに手元に残すものを選ぶ際の判断材料になる
とくに、まとめて売る予定がある場合には効果が大きくなります。数十点のアクセサリーを袋ごと持ち込むより、素材別に仕分けて一覧を添えたほうが、査定の説明を受けるときに内訳を追いやすくなります。刻印を読む作業は、その仕分けの第一歩に当たります。
もちろん、読み取れないものを無理に判定する必要はありません。分からないものは分からないまま査定に出し、結果を聞けば十分です。自分で確認する目的は正解を出すことではなく、当日の会話を理解しやすくすることにあります。
まとめ
刻印の読み方は、いくつかの原則さえ押さえてしまえば難しいものではありません。手元のジュエリーを仕分ける際の基準として使ってみてください。
- 金はKに続く数字が24分率、750などの数字は千分率で、K18と750は同じ75パーセントを指す
- プラチナはPt、銀はSVまたはSILVER、パラジウムはPdで始まり、続く数字が千分率の純度を示す
- GPやGF、GEPといった文字が続く刻印はメッキや金張りを意味し、素材としての評価は大きく変わる
- 刻印がない、読めない場合でも成分を測定する方法があるため、自己判断で処分せず査定に出すとよい
刻印を読めるようになると、引き出しの中のアクセサリーが違って見えてくるはずです。売る価値のあるものが見つかったら、次は依頼先を選ぶ段階です。
刻印を確かめたジュエリーをどこに持ち込むか迷ったら、編集部がまとめたジュエリー買取サービスの一覧も参考にしてみてください。
